レモンといえば、爽やかな香りと酸味がさまざまなお料理を引き立ててくれる身近な果物ですが、伊豆大島で栽培されている御神火レモンは、香り・酸味・みずみずしさが際立ち、実は通常より1.3倍〜1.5倍の大きさ。そんな御神火レモンをゼロからつくり始めた農家さんがいらっしゃいます。
金森三夫(かなもりみつお)さんは全くゼロの状態からレモン栽培に着手し、試行錯誤を繰り返すこと10年以上。ようやく、自慢のレモンを作ることに成功しました。今回はそんな金森さんのストーリーをのぞいてみましょう。
サウンドエンジニアから農家へ。ゼロからの挑戦
金森さんは2002年に父の畑を引き継ぐために出身地である伊豆大島に戻ってきました。
それまではフリーのサウンドエンジニアとして、CMの音源制作や著名人のインタビュー録音等、技術屋として日々飛び回っていました。
そんな金森さんが突如として農業に取り組むことになったわけですが、農業を営むのはもちろん初めてのこと。さぞや苦労されたのだろうと思いきや、幼い頃から父の畑によく足を運び、父の仕事を見てきたこともあり、ある程度の年代になると手伝うこともあったので、戸惑い等はほとんどなく取り組めたそうです。
レモンが伊豆大島の魅力の1つになると信じて
島に戻った頃は父がメインで栽培していたキヌサヤの栽培に専念していましたが、ある日、友人から「レモンを栽培してみたらどうか?」と提案を受けました。
友人は「伊豆大島は気候が温暖なので、レモンの栽培に適しているし、栽培状況が良ければ一年中収穫できるものになる。さらに観光地なので、レモンを使ったスイーツや飲料などを開発することで観光振興にもつながる。」と言って栽培を勧めてきました。
もともと好奇心旺盛な性格の金森さん、新しいことには積極的に取り組んできました。今回も島内での栽培事例はほとんどなかったものの、面白いお話だと思って提案を受けることにしました。
そんなわけで、友人に薦められて始めたレモン栽培でしたが、最初に苦労したのは、島特有の強い季節風でした。特に秋口から冬場にかけて強く吹き付ける西風は厳しいものです。レモンの茎には棘がある為、風が強く吹くとレモンが自身を傷つけてしまい、病気や品質低下の原因になっていました。
そこで、少しでも風の影響を和らげようと、畑の周囲に防風ネットを張るなど対策を施しました。今では、立派なネットがレモンの木々をしっかり守ってくれています。
御神火様とともにある島「伊豆大島」のこと
伊豆大島は島全体が活火山の島です。島の中央部には三原山がそびえ古くから噴火を繰り返してきた為、「御神火(ごじんか)様」と崇め尊んできました。また海洋の影響を強く受け気温の較差が小さく、黒潮の流れのため温暖多湿な海洋性気候となっています。
とても自然豊かな島で島の97%が自然公園法によって規制されているため、自然の景観や生態系が十分に保護された美しい島です。また富士箱根伊豆国立公園に指定されており、国立公園の島でもあります。
度重なる噴火によって生まれた大地、島の中央にそびえる御神火様こと三原山、金森さんは農園のレモンを「御神火レモン」と名付け、ブランド化させたいといつの日か考えるようになりました。
潮風と火山の土壌が育くむ極上レモン
温暖で降水量の多い島の気候と、過去に繰り返してきた噴火による火山灰土壌が、御神火レモンに適度な水分を供給します。
また、強い季節風からレモンを守る防風ネットは海からの潮風を程よく浴びさせることで、実が通常よりも大きく、爽やかな酸味と強い香り、そしてジューシーな果肉が特徴のレモンに育てあげるのに一役買っています。
御神火レモンが目指すこと
まったく知識や経験のない状態から、多くの方々の協力を得ながら進めてきてようやくここまでレモンを育て上げることができました。今後は、島の未来のため、未来ある若者に引き継ぎ、レモンが伊豆大島の特産品として誰もが知るまでに育ってくれたらこんなに嬉しいことはありません。ぜひこの機会に私が丹精込めて作り上げた御神火レモンをご賞味ください。