今回ご紹介する生産者さんは南部をベースに有機栽培を行う酒井農園の酒井周(さかいしゅう)さんです。
酒井さんは学生時代に生物学を専攻されており、生物に関する様々な研究をされてきたそうで、卒業後は動物調査会社に就職されてまさに生物一筋な人生を送られてきました。その後「野生の動植物と最も接触できる仕事」というのが理由で農業を志すようになり脱サラ。長野県南佐久郡八千穂村の有機農家で2年間住み込みで勉強を行った後に、生まれ故郷である大島に戻り就農を開始されました。
大島に戻って最初に苦労したことは畑の確保でした。貸してくれるオーナーさんを探すのに非常に苦労されたそうです。ようやく見つけた畑は草木が生い茂る木藪で、大島に戻った1年目はひたすら開墾に明け暮れる日々だったのだとか。
大島には耕作放棄地が数多く存在しますが、様々な問題が重なって貸してくれるところまでスムーズに話が進むのは稀なのだとか。これは何とかしたい課題ですね。
さて、酒井さんの趣味はクワガタ採集、飼育・天体観測・シュノーケリングと、どれも大島で一流レベルで楽しめるアクティビティなので、酒井さんにとって大島は最高な場所なのです。ちなみに、大島にクワガタはいますが、カブトムシはいません。これ、何でなんですかね?今度酒井さんに聞いてみよう(笑)。
酒井農園さんで主に栽培されている品目は白菜、キヌサヤエンドウ、パッションフルーツ、カリフラワー、トマトなど。ガラスハウスの中心からメインツリー的存在感を放ち横へ横へと大きく伸びる木はパッションフルーツ。樹齢は5年ほどですが、すでにガラスハウス内を埋め尽くす勢いで成長していました。
現在は南部にガラスハウス1棟、路地5ヶ所、北部に路地1ヶ所の畑を管理されています。今後も農地を拡大して島内の生鮮野菜の自給率を高めたいと心強いお言葉をいただきました!
生き物たちの循環に任せた農業
酒井さんの圃場にお邪魔してまず最初に感じたところは、失礼ですが、“あまり整備されていない”ところでしょうか…(^^;)。植物たちがのびのびと成長している様子が伺えて、雑草たちも元気に育っていました(笑)。
これにはもちろん理由があり、酒井さん自身が「生物たちと触れ合いたい」というところがあるのではないかと推測されますが(笑)、本命は植物たちの自然の循環や成長に任せることが最良だと考えているから。圃場内の落ち葉を集めてハウス内で堆肥も作られていたりと、自然の循環や環境に合わせた農業スタイルを確立されていました。そんな自然に任せた生産スタイルのため、多く量を生産することはできませんが、どの品目も自然の力で育った力強い野性味溢れる野菜たちです。
そんな生き物大好きな酒井さんですが、生き物に悩まされている一面も。
それは特定外来生物に指定されているキョンによる被害。この“キョン”名前は可愛らしく、見た目も鹿の子供のようで可愛いいのですが、容赦無く農作物を食い荒らす生産者さんにとって天敵ともいえる存在。酒井さんの圃場でも見事にやられていました。畑の周囲にネットを張ってキョンが入ってこれないように対策は随時行なっているそうですが、最近はそのネットを飛び越えてくるキョンも現れて、新たな対策を講じる必要があるのだとか。キョン問題、とっても深刻なのです。
そんな酒井さん、農業の他に養蜂にも取り組まれていて、ぶらっとハウスの大人気商品「はちみつソフト」に使用していた蜂蜜は何を隠そう、酒井農園さんの蜂蜜でした。
この養蜂にも天敵がたくさん。気象環境はもちろん、スズメバチをはじめとした様々な害虫からミツバチたちを守らなければならないため、気の休まる時がありません。今年は残念ながら害虫にやられてしまい採蜜は難しいかな、と酒井さん。まだまだ試行錯誤は続きます。
というわけで、酒井さんの農園はいかがでしたか?
火山島の力強い大地と、離島ならではの厳しい自然に鍛え上げられた力強いお野菜たち、そんな自然本来の環境に近いところで育てられたお野菜を頂いて強い体をつくりたいですね。